BZ060:イロハモミジ Acer palmatum——翼果の空気力学とMITが解明した前縁渦

植物図鑑 BZ060

医スク学術体系 | ボタニカルサイエンス 図鑑 BZ060 Last updated: 2026-05-20

イロハモミジの翼果(Photo: Σ64 / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons)


基本分類

項目 内容
和名 イロハモミジ(いろは紅葉)
別名 タカオカエデ、イロハカエデ
ラテン名 Acer palmatum Thunb.
英名 Japanese maple
ムクロジ科(Sapindaceae)※旧カエデ科
カエデ属(Acer
染色体数 2n = 26
原産地・分布 日本・中国・朝鮮。本州〜九州の山地・丘陵地に普遍的
生活型 落葉小高木(樹高5〜10m)
開花期 4〜5月

形態の特徴

  • :掌状に5〜9深裂。裂片の先端が鋭く尖る。「いろはにほへと…」と数えられる葉の切れ込みから命名された
  • :暗紅色の小花、直径約5mm。葉の展開と同時に開花
  • 果実(翼果・samara):2個の翼果が対になって付く。成熟すると1個ずつ分離し回転しながら落下する——プロペラ飛行の原理(autorotation)で種子を遠くへ運ぶ
  • 紅葉:秋にアントシアニン(赤)・カロテノイド(黄)が発現

翼果(samara)の空気力学

イロハモミジの翼果が回転しながら落下する仕組みは精巧な空気力学の産物だ。翼の非対称形状が落下中に回転(autorotation)を生み、揚力によって落下速度を遅らせる。これにより種子は風に乗って親木から離れた場所に着地できる。

MITの研究(Lentink et al., 2009)では、翼果の回転によって翼の前縁に**leading edge vortex(前縁渦)**が形成され、これが揚力を大幅に増大させることが明らかになった。ヘリコプターのローターと同じ原理で、自然がヘリコプターの空気力学を数千万年先に「発明」していたことになる。


主要フィトケミカル・活性成分

化合物 分類 主な生理活性
アントシアニン(シアニジン等) フラボノイド 抗酸化、UV吸収(紅葉の色素)
タンニン(エラジタンニン等) ポリフェノール 収斂・抗菌
ルチン フラボノイド配糖体 毛細血管強化
クロロゲン酸 フェノール酸 抗酸化

紅葉のメカニズム

秋に気温が低下し日照時間が短縮すると、葉の離層形成が始まり葉緑素が分解される。同時にアントシアニンが新たに合成され(光と糖の存在下で)、緑→黄→赤の変色が進む。アントシアニンは葉に残った糖を保護する役割があるという説(光保護仮説)が有力だ。

高尾山は紅葉の名所として知られ、11月中旬〜下旬が見頃。山全体のイロハモミジが一斉に赤く染まる景観は年間300万人以上の観光客を集める。


生態・観察ポイント

5月の今の時期は翼果の観察が最適。プロペラのように回転しながら落ちる翼果を子どもと一緒に拾う体験は定番。翼果の向きを変えると回転方向が変わることを確認できる。


人との関係

日本庭園・盆栽の代表的素材。欧米でも Japanese maple として広く栽培される世界的観賞樹木。大阪では桜の葉の天ぷらと並んで「もみじの天ぷら」が名物(未熟な種子ごと揚げる)。高尾山周辺では「高尾もみじまつり」が秋の一大イベント。


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Photo credits: 1. Σ64 / CC BY-SA 3.0 — via Wikimedia Commons

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