BZ059:クスノキ Cinnamomum camphora——カンファーの化学と樹齢1000年の巨木

植物図鑑 BZ059

医スク学術体系 | ボタニカルサイエンス 図鑑 BZ059 Last updated: 2026-05-20

クスノキの葉と実(Photo: 663highland / CC BY 2.5 via Wikimedia Commons)


基本分類

項目 内容
和名 クスノキ(楠)
別名 クス、ナンジャモンジャ(地域による)
ラテン名 Cinnamomum camphora (L.) J. Presl
英名 Camphor tree, Camphor laurel
クスノキ科(Lauraceae)
ニッケイ属(Cinnamomum
染色体数 2n = 24
原産地・分布 中国・日本(九州・四国南部)原産。現在は温暖地で広く街路樹・神社の巨木として存在
生活型 常緑高木(樹高20〜30m、幹径1〜3m)
開花期 5〜6月

形態の特徴

  • :卵形〜楕円形、長さ5〜10cm、光沢がある。三行脈(葉の基部から3本の主脈が出る)が特徴。葉を揉むとカンファーの強烈な香り
  • :淡黄白色の小花、直径約5mm。葉腋に円錐花序
  • 果実:球形の核果、直径約8mm。熟すと黒紫色。鳥散布
  • 樹皮:灰褐色、縦に不規則に裂ける。老木は巨大な板根を発達させることがある

カンファー(camphor)の化学

葉・木材・根に含まれる揮発性成分の主体はカンファー(樟脳)——化学名 (1R,4R)-1,7,7-trimethylbicyclo[2.2.1]heptan-2-one。二環式モノテルペンケトンで、生合成はメバロン酸経路→ゲラニル二リン酸→ボルニル二リン酸→カンファーという経路。

カンファーの用途と薬理:

  • 局所刺激薬:皮膚に塗布すると冷感→温感の二相性刺激(TRPM8・TRPV1受容体を介する)
  • 防虫・防腐:タンス・衣料の虫除けの歴史的使用
  • 鎮咳・去痰:カンファー含有軟膏(ヴィックスヴェポラッブ等)
  • 高用量では神経毒性:痙攣・意識障害。子どもへの大量塗布は危険

主要フィトケミカル・活性成分

化合物 分類 主な生理活性
カンファー(camphor) 二環式モノテルペン 局所刺激・鎮咳・防虫・神経毒(過量)
リナロール(linalool) モノテルペン 鎮静・抗不安(アロマ効果)
サフロール(safrole) フェニルプロパノイド 発がん性(IARCグループ2B)・MDMAの前駆体として規制
ユーカリプトール(1,8-cineole) 環状エーテル 去痰・抗炎症

生態・観察ポイント

神社・公園・学校の「御神木」として日本最大級の巨木が多い。樹齢1000年を超えるものも存在(鹿児島県の蒲生の大クスは樹齢1500年以上、幹周24m)。葉を揉んで子どもに香りを嗅がせると確実に反応する——「カンファーの匂い」は防虫剤の匂いとして多くの人が記憶している。


人との関係

かつてカンファーは日本の重要輸出品で、台湾・九州産の樟脳は世界市場を席巻した。現在は合成品に取って代わられたが医薬品原料として利用は続く。材は緻密・芳香で彫刻・仏像・船材・タンスに使われる。


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Photo credits: 1. 663highland / CC BY 2.5 — via Wikimedia Commons

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