BZ058:クズ Pueraria montana——葛根湯の原料と北米を席巻した侵略者

植物図鑑 BZ058

医スク学術体系 | ボタニカルサイエンス 図鑑 BZ058 Last updated: 2026-05-20

クズの花(Photo: KENPEI / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons)


基本分類

項目 内容
和名 クズ(葛)
ラテン名 Pueraria montana (Lour.) Merr. var. lobata (Willd.) Maesen & S.M.Almeida
英名 Kudzu
マメ科(Fabaceae)
クズ属(Pueraria
染色体数 2n = 22
原産地・分布 東アジア原産。日本全国の草地・林縁・河原に普遍的に自生
生活型 多年生つる草本(年間成長10〜30m)
開花期 7〜9月

形態の特徴

  • :木質化したつる、長さ数十mに達する。他植物に絡みつき覆い尽くす強力な繁殖力
  • :3小葉の複葉、小葉は大きく(長さ10〜20cm)、裏面に白毛が密生
  • :紫〜赤紫色の蝶形花(papilionaceous flower)、甘い香り。長さ15〜25cmの総状花序
  • :直径10〜30cm、深さ数mに達する巨大な塊根。葛粉(くず粉)の原料

北米での「悪名」

クズは1876年のフィラデルフィア万博で「緑化・飼料植物」として北米に紹介された。1930年代には土壌浸食防止のためアメリカ政府が植栽を奨励し、100万エーカー以上に植えられた。しかし日本の天敵(虫・病原菌)が不在の北米では爆発的に繁茂し「the vine that ate the South(南部を食い尽くしたつる)」と呼ばれる侵略的外来種となった。現在も年間数百億円規模の駆除コストが発生している。


主要フィトケミカル・活性成分

化合物 分類 主な生理活性
プエラリン(puerarin) イソフラボン配糖体 血管拡張・アルコール依存抑制(臨床研究あり)
ダイゼイン(daidzein) イソフラボン エストロゲン様作用・更年期症状緩和
クメスタン類 ポリフェノール 抗酸化
アロインG 抗炎症

プエラリンはアルコール摂取量を減らす効果が複数のRCTで示されており、アルコール依存症治療薬としての開発研究が進んでいる(Lukas et al., 2005)。


葛根湯との関係

漢方の葛根湯(かっこんとう)の主薬「葛根(かっこん)」はクズの根。イソフラボン類・サポニン類が主成分で、発汗・解熱・筋肉弛緩作用を持つ。日本で最も売れる漢方薬の一つで、「風邪の引き始め」への使用が定着している。ただし葛根湯は麻黄(エフェドリン含有)との複合処方であり、クズ単独の効果とは区別して評価する必要がある。


生態・観察ポイント

夏〜秋、紫の花穂と甘い香りは目を引く。訪花昆虫はクマバチが最も効率的な花粉媒介者(クマバチのみが花粉塊にアクセスできる構造)。根は霜が来ても枯れず翌春に再び猛烈に伸長する。秋の七草の一つ(萩・薄・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗)。


人との関係

根から取るくず粉は料理(葛湯・葛切り・葛餅)の天然とろみ剤。繊維(葛布)は古来の衣料材料。北米では皮肉なことに「駆除しながら食べる」文化が生まれ、葉・花・根のレシピが普及しつつある。


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Photo credits: 1. KENPEI / CC BY-SA 3.0 — via Wikimedia Commons

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