マルチビタミン・ミネラルは本当に無意味か？「ネイチャーメイド」を飲む私が解説するコスパとエビデンス

「マルチビタミンなんて気休めだ」「高い尿になるだけ」

皆さん、そういった情報を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。サプリメント業界は玉石混淆。特に「マルチビタミン・ミネラル」は最も古くからあるジャンルなだけに、「効果がない」という否定的な意見も根強くあります。

多忙なハイパフォーマーの皆さんなら、コスパが悪く、科学的根拠のないものに時間もお金も使いたくないのは当然です。

しかし、薬剤師としてエビデンスを追求する私が、あえて長年、誰もが知る「ネイチャーメイド」のような、ごくベーシックなマルチビタミン・ミネラルを摂取し続けているのには理由があります。それは、巷の「不要論」の多くが、現代の栄養学的課題を無視しているからです。

今日のテーマは、この「不要論」の科学的根拠を検証し、マルチビタミン・ミネラルがあなたのパフォーマンス維持にいかに不可欠な「保険」となるかを解説します。

🎧Podcastで聴く：Masaがなぜあえて「ネイチャーメイド」を選ぶのか？コスパとエビデンスの観点から深掘りします。

マルチビタミン「不要論」の医学的検証

マルチビタミン不要論の根拠としてよく引用されるのは、「大規模臨床試験（RCT）において、マルチビタミンが心血管疾患や癌のリスクを明確に低下させなかった」という結果です。しかし、この解釈は、現代人が抱える「マージナル・デフィシエンシー（軽度栄養欠損）」の問題を見落としています。

1. マージナル・デフィシエンシー（軽度栄養欠損）

マルチビタミンの主な役割は、欠乏症（例：壊血病、脚気など）を予防することではなく、「最適な生理機能に必要な微量栄養素を確実に補給すること」です。

現代の食事の課題として、土壌の痩せ化、加工食品の増加、そして多忙による偏った食生活により、カロリーは満たされていても、体内で大量に消費されるビタミンB群やマグネシウム、亜鉛といった微量ミネラルが、至適量（オプティマル・インテイク）に達していない状態が常態化しています。

これらの微量栄養素がわずかに不足する（マージナル・デフィシエンシー）と、生命維持に直接関わる酵素反応は保たれるものの、疲労回復、免疫応答、精神安定など、ハイパフォーマンスに不可欠な「非必須な生化学的反応」が鈍化すると考えられます。RCTで有意差が出にくいのは、すでに欠乏症になっていない健常者群を対象としているためです。

2. ビタミンC・B群の消耗

多忙なハイパフォーマーが特に意識すべきは、ストレスやアルコール代謝で大量に消費される水溶性ビタミンです。

ビタミンCは、強力な抗酸化作用を持つだけでなく、ストレスホルモンであるコルチゾールの合成・代謝にも関与しています。ストレス負荷が高い状態では、体内のビタミンCの消費が劇的に増大することが示されています。

ビタミンB群は、エネルギー代謝（TCAサイクル）の補酵素として機能します。脳の活動や肉体的な疲労回復に直接関わるため、摂取量が至適レベルに達していないと、慢性疲労や集中力の低下の原因となると考えられます。

3. 「ネイチャーメイド」を選ぶ合理性

私が「ネイチャーメイド」のようなベーシックな製品を推奨する理由は、そのコストパフォーマンスと品質基準です。

まず、品質の均一性です。大塚製薬が販売するネイチャーメイドは、米国ファーマバイト社の製品であり、GMP（優良製造規範）基準で製造されています。これは、配合量が担保されており、品質のばらつきが少ないことを意味します。

次に、過剰摂取のリスク低減です。超高容量の製品は過剰摂取のリスクや腎臓への負荷が懸念されますが、ネイチャーメイドのような製品は、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に近接した量で設計されており、日常的な「栄養の穴埋め」という目的に対して最も合理的な選択肢であると判断されます。

漢方医学的視点：微量栄養素と「気・血」

漢方的な視点から見ると、微量栄養素の軽度欠損は、「気虚（エネルギー不足）」や「血虚（栄養不足）」といった体質の不調を招くトリガーとなります。

土台の栄養が不足している状態で、どんなに高価な漢方薬や特別なサプリを摂っても、その効果は半減してしまいます。マルチビタミン・ミネラルは、すべての健康戦略の「土台」であり、まず最初に飲むべきサプリメントだと私は考えています。

結論と対策：高性能エンジンのオイル

マルチビタミン・ミネラルは、病気を治す「治療薬」ではありません。高価なスーパーカー（あなたの体）を最高の状態で走らせ続けるための「高性能エンジンオイル」のようなものです。

最高の食事を毎日完璧に摂れるのなら不要かもしれません。しかし、多忙でストレスフルな環境下では、食事の偏りや栄養素の消耗が避けられません。マルチビタミンは、その消耗による「栄養学的リスク」を最小限に抑えるための、最も安価で手軽な「保険」なのです。

まとめ

マルチビタミンは、現代人にとっての「生存戦略」です。

ポイントの整理：

現代人はカロリー過多でも微量栄養素不足（マージナル・デフィシエンシー）に陥りやすい。
ストレスや多忙はビタミンB・Cを大量に消費する。
ネイチャーメイドは品質と安全性のバランスが取れた合理的な選択。
漢方的にも「気・血」の土台を作るために必須。

サプリメント選びに迷ったら、まずは基本に立ち返ってください。「私のエンジンオイルは、足りているだろうか？」と。