限界日本医療 - Life Tap - #001:138兆円の使い道


2024年度の社会保障給付費が138兆円を超えた、
年金61.7兆円、医療42.8兆円、福祉・その他33.4兆円、日本のGDPの約22%が、この一本の管を通って流れていく、
2026年度、国の一般会計における社会保障関係費は39.1兆円で過去最高を更新した、国の歳出のうち、3分の1近くが社会保障に向かっている計算だ、

1965年、現役世代9.1人が高齢者1人を支えていた、「胴上げ型」と呼ばれた、大勢で一人を担ぐ図だ、
2025年、その比率は2.1人で1人になった、「騎馬戦型」、2人がかりで1人を乗せている、
2040年、1.2人で1人を支える時代が来ると試算されている、「肩車型」、一人が一人を乗せて走る、
これは比喩ではなく、税と保険料の設計に直接跳ね返る数字だ、現役世代が支払う社会保険料は年収の約30%に達する、手取りが増えない理由の一つは、ここにある、

誰かを悪者にするために書いているのではない、
高齢者は長年、保険料を支払ってきた、年金も医療保険も「積み立て」という建前で設計されてきた、しかし実際は、現役世代から高齢世代への仕送りに近い賦課方式で動いている、積み立てた分が返ってくるわけではない、人口構造が変われば、受益と負担のバランスは崩れると、設計者は分かっていたはずだ、
問題は個人ではなく、制度設計の前提が崩壊した後も、制度の形だけが温存されていることだ、
医療費の約半分は75歳以上の後期高齢者が消費している、その財源は、若い世代の保険料と税金が支えている、制度上の「連帯」という言葉は正しい、しかしその連帯が、一方向に流れ続けているという事実は、数字の上に明確に記されている、

薬剤師として調剤の現場で見ていると、感覚として理解できることがある、
高齢患者が一度の来局で受け取る処方薬が、10種類を超えることは珍しくない、ポリファーマシーと呼ばれる状態だ、薬の副作用を抑えるために別の薬を処方し、その薬の副作用をさらに別の薬が抑える、このカスケードが、医療費の見えにくい膨張を生む、
処方する医師に悪意はない、患者に悪意はない、ただ、止める判断よりも追加する判断の方が、制度的に楽だという構造がある、
終末期の高度医療の費用が医療費全体に占める割合は小さくない、最後の数ヶ月間に集中する医療費が、生涯医療費の大きな部分を占める、誰も口にしたがらない問いだが、その費用は誰が、何のために支払っているのか、タブーであり続けている、

138兆円のうち、いくらが治療に使われ、いくらが維持に使われているか、
その問いは、医療倫理の文脈でも、財政の文脈でも、避けられている、

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