大麻(Cannabis sativa)

植物図鑑 BZ043

医スク学術体系 | ボタニカルサイエンス 図鑑 BZ043 Last updated: 2026-05-03

Cannabis sativa ボタニカルイラスト(Köhler's Medizinal-Pflanzen, 1887 / Public Domain)


基本分類

項目 内容
和名 大麻(タイマ)・麻
別名・流通名 マリファナ(俗称)、ヘンプ(Hemp=繊維用途)、カンナビス
ラテン名 Cannabis sativa L.
英名 Cannabis / Hemp / Marijuana
アサ科 Cannabaceae(旧分類ではクワ科 Moraceae に含めることも)
アサ属 Cannabis
C. sativa(他に C. indicaC. ruderalis が認識されることがある)
分類学的備考 単型属(属内に1〜3種のみ)。C. indicaC. ruderalis を別種とするか亜種とするかは現在も議論中
倍数性・染色体数 二倍体(2n = 20)、雌雄異株
原産地・分布 中央アジア(カザフスタン〜中国西部が有力)。現在は全世界で栽培または帰化
生活型 一年生草本
草丈 1〜5m(品種・栽培条件によって大きく変動)
栽培化の時期 約1万年前(繊維・食用種子の利用が先行。薬用は少なくとも2500年前)
主要生産国 中国(繊維・種子用途が中心)、カナダ・米国(医療・嗜好品用途)

Cannabis sativa 精密図(Otto Wilhelm Thomé, 1885 / Public Domain)

形態の特徴

  • 茎: 直立・中空・繊維質。表面に細毛あり。木質化しない(草本)
  • 葉: 掌状複葉、小葉3〜11枚。鋸歯縁。特徴的な葉形は世界的に認知される
  • 花序: 雌雄異株。雄株は円錐花序(風媒花)、雌株は穂状花序で密に集まる
  • 果実: 分果(アキーン)。種子は油分が豊富
  • トリコーム: 雌花・苞葉を覆う腺毛(glandular trichome)がカンナビノイドの主要生産・貯蔵部位
  • 根系: 直根性・深根性。排水良好な土壌を好む

主要フィトケミカル・活性成分

化合物 分類 主な生理活性
Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC) フィトカンナビノイド(テルペノフェノール) CB1・CB2受容体作動薬。精神活性・鎮痛・制吐・食欲増進
カンナビジオール(CBD) フィトカンナビノイド 非精神活性。抗てんかん・抗炎症・抗不安(CB1/CB2への親和性低い)
カンナビノール(CBN) THCの酸化分解産物 軽度の精神活性、鎮静作用
テルペン類(ミルセン・リモネン・β-カリオフィレン等) モノ/セスキテルペン 芳香・抗菌・β-カリオフィレンはCB2部分作動薬
カンナビノイド酸(THCA・CBDA) 未脱炭酸前駆体 加熱で脱炭酸しTHC・CBDへ変換(生の植物では非活性)
フラボノイド(カンナビフラビン等) ポリフェノール 抗炎症・大麻固有のフラボノイドを含む

カンナビノイド含量: 品種・栽培条件によって大きく異なる。繊維用ヘンプはTHC < 0.3%、医療用品種は20〜30%に達することも。


人との関係(利用・文化)

繊維・工業: 茎の靱皮繊維は大麻布・ロープ・紙・建材(ヘンプコンクリート)として利用。栽培化の主要動機はこの繊維利用とされる。

食用: 種子(ヘンプシード)は必須脂肪酸(ω-3/ω-6比が理想的)・タンパク質・ミネラルが豊富。ヘンプオイル、プロテインパウダーとして流通。

医療: 鎮痛・制吐(化学療法後)・多発性硬化症の筋痙攣・難治性てんかん(CBD)への有効性が臨床試験で確認。CBD成分薬(Epidiolex)はFDA承認済み。

嗜好品: 喫煙・気化・食品添加による精神活性目的の使用。世界的に法的地位が変化中(カナダ・米国一部州等で合法化)。

宗教・文化: ヒンドゥー教の儀式(バング)、スキタイ人の記録(ヘロドトス紀元前5世紀)、インド・中国の伝統医学まで、人類との関わりは数千年に及ぶ。


内因性カンナビノイドシステム(ECS)との接続

Cannabis sativa がヒトの受容体に作用する理由は、植物が作り出したTHCが、ヒト体内の内因性カンナビノイドシステム(ECS)の受容体(CB1・CB2)に外因性リガンドとして結合するためである。ECSは中枢神経・免疫・消化管・内分泌系に広く分布し、痛み・気分・記憶・食欲・炎症を調節する。植物が偶然にも動物の神経調節システムと適合する化合物を生産したという事実は、植物化学の「神秘中の神秘」と言える。

体系記事(B-series) での詳細論証予定



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Photo credits: 1. H.A. Köhler / Public Domain — Köhler’s Medizinal-Pflanzen, 1887, via Wikimedia Commons 2. Otto Wilhelm Thomé / Public Domain — Flora von Deutschland, 1885, via Wikimedia Commons

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