廃校薬学部OB #002:出席番号25番と26番
廃校薬学部OB #002:出席番号25番と26番
2026.05.06
入学時、出席番号は26番だった
隣の25番は、中澤という女性だった
成績で言えば、入学時点での僕の方が高かった、 彼女はたぶん下のグループにいた、
2026年現在、彼女は最大手チェーン薬局の一つに5年間勤務し、会社の採用案内ページに「卒業生の進路」として掲載されている、

彼女が突出した人材だったとは思わない、
飛び抜けた才能も、際立った実務能力も、強烈な印象も、なかった、
ただ彼女は、薬学部6年間を摩耗せずに歩いた、
国家試験に一発で合格した、求められる形で就職した、5年間続けた、

医療系教育、現場では求められる性質
「摩耗しない人材」だ、
医療現場の労働環境は過酷だ、調剤ミスは訴訟に直結し、患者との関係は感情的消耗を伴う、人手不足でシフトの融通は効かない、
そういう環境を6年・10年・20年と継続できる人材を、業界は必要としている、
彼女はそれに適していた、僕は適していなかった、

これは彼女の能力の話でも、僕の能力の話でもない、
選別の基準の話だ、
医療システムが求めているのは、突出した才能よりも、代替可能で、
指示に従い、摩耗しない人材だ、ペーパーテストの順位は、その基準に必ずしも関係しない、
入学成績と卒業後の評価が逆転することは 珍しくない
彼女の顔が採用ページにある、
羨ましいと感じるか
どうでもいいと感じるか
それは人による
正直に書けば、両方同時に感じている、
ただ、どちらの感情も、書きたいのはそこではない、

医療職の現場を離れた人たちと、話す機会がある、
「がんばって卒業した、国試も通った、就職した、でも3年で辞めた」という話を、ひとつのパターンとして聞くことがある、
辞めた理由の多くは、過酷な労働環境だ、ハラスメント、人手不足、給与と負担のバランス、終わりの見えない夜間勤務、
「自分が弱かったから」と言う人が多い、

本当にそうだろうか、
25番のような人材は、確かに現場に必要だ、続けられる人がいなければ、医療は回らない、
ただ、26番のような人間が現場を離れることを、「弱さ」と呼んでいいのかどうか、
システムが求める形に合わなかっただけで、その人が壊れたとき、誰もそれを記録しない、
繰り返しになるが、 彼女を批判するつもりは一切ない
誰がどうみても優秀な人だし、 同期として誇りに思う
JIUは2027年以降、新しい学生を受け入れなくなる、
25番はアインファーマシーズの採用ページに残る、
26番は、この文章を書いている、
廃校薬学部OB #002
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